研究所レポート

2024.04.10

「行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究」

本調査研究は、東京都が実施したアジャイル開発事業の事例研究に基づいて、準委任契約を前提としたアジャイル開発を現場で実践するためのプロセスを明らかにしています。また、デジタル・ガバメント先進国の行政機関での事例調査に基づいて、組織文化の変革を含めた組織マネジメントの観点からのアジャイル開発導入上の課題を明らかにしています。

 近年、アジャイル開発は、行政においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進のための重要なアプローチとして認識されるようになっています。しかしながら、現行の公共調達の枠組みの下では、その実践には限界があり、新たなアプローチによるアジャイル開発の導入のあり方が求められています。そこで、本調査研究では、東京都が実施したアジャイル開発事業の事例研究に基づいて、準委任契約を前提としたアジャイル開発を現場で実践するためのプロセスを明らかにしています。また、デジタル・ガバメント先進国の行政機関での事例調査に基づいて、組織文化の変革を含めた組織マネジメントの観点からのアジャイル開発導入上の課題を明らかにしています。

 

1.「行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究」報告書:プロジェクト実践編

東京都では、予め仕様を決め打ちにしない、準委任契約に基づくアジャイル開発を行う事業に2021年度から取り組んでいます。2022年度には複数のプロジェクトで業務・サービスの改善を達成するとともに、組織内でのアジャイル開発のマインドセットの醸成、参加者の高い満足度の実現が得られるなどの成果を挙げています。この取組みを通じて蓄積されたナレッジには、他の行政機関や自治体にとっても重要な意義を持つ示唆が多く含まれていると考えられます。そこで、本調査研究では、東京都の協力を得て同事業について事例研究を行い、蓄積されたナレッジを形式知化するとともに、他の行政機関等でも活用できるよう一般化したプロセスとして整理しています。

 

2.「行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究」報告書:組織マネジメント編

デジタル・ガバメント先進国とされるデンマークや英国では、2010年代から行政のシステム構築やサービス開発にアジャイル開発が取り入れられてきました。それらの行政機関では、アジャイル開発は単なるソフトウェア開発手法ではなく、組織文化の変革も含めた、組織マネジメントのあり方の見直しを伴う取組みであると認識されています。我が国においても、今後行政機関が本格的にアジャイル開発を導入するに当たっては、こうした観点が不可欠になってきます。そこで、本調査研究では、諸外国行政機関の事業について幅広く事例調査を行い、アジャイル開発の導入における組織マネジメントの観点からの課題を明らかにしています。

 

3.公開コンサルテーションの結果の反映について

本調査研究報告書の「プロジェクト実践編」はとりまとめに先立ち、行政のアジャイル開発を巡る多様なステークホルダーから幅広く意見を求め、対話を通じてフィードバックを得ながら洞察を深めていくプロセスとして、公開コンサルテーションを実施しました。

公開コンサルテーションの期間を通じて、行政機関、独立行政法人、民間企業、民間団体、学術研究グループなど6機関・団体の有識者や実務家の方々と集中的な意見交換を実施し、下記の方々を始めとする15名の方から計60件のご意見等をいただきました。

【特に重要な示唆をいただき、かつ、お名前の掲載を許諾いただいた専門家】

岡島 幸男 氏(株式会社永和システムマネジメント 取締役CTO
木下 史彦 氏(株式会社永和システムマネジメント Agile Studio アジャイルコーチ)
中野 安美 氏(Agility Design株式会社 代表取締役/アジャイルコーチ)
御堂岡 真 氏(株式会社NTTデータ )
和田 憲明 氏(富士通株式会社)

本報告書は、これらのご意見等を大幅に取り入れて加筆修正し、とりまとめたものです。なお、いただいたご意見等とそれに対する回答は、下段の「公開コンサルテーションでいただいたご意見等と回答」のとおりです。

貴重なご知見をいただきました有識者・実務家各位に、改めて深く御礼申し上げます。

行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究〈プロジェクト実践編〉(国内編)報告書のポイント

行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究〈プロジェクト実践編〉(国内編)

行政におけるアジャイル開発の実践に向けた調査研究〈組織マネジメント編〉(海外編)

公開コンサルテーションでいただいたご意見等と回答