<背景・趣旨>
現在、政府・自治体では、行政のデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」)が重要な課題となっています。政府では2021年9月にデジタル庁が設置される予定であり、自治体でも、多くの団体でDX推進組織の設置が相次いでいます。ただし、そうした組織におけるDX推進手法の具体的なアプローチの確立に向けてまだ試行錯誤が続いています。一方、デジタル・ガバメントの先進国の中には、DX推進体制を整備し、組織的に改革を進める動きが拡がっており、その推進手法の高度化と拡充が進められています。
なかでも英国政府では、他国に先駆けてDX推進組織としてGovernment Digital Servives(以下「GDS」と称する)を2011年に設立し、10年にわたり政府全体のデジタル化を主導してきました。しかし、GDSの設立後5年が経過した頃からパフォーマンスの低下が指摘されるようになり、2018年にはデータ政策のとりまとめがGDSからデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)に移管されるなど権限の縮小ともみられる決定もなされています。
こうした一連の流れを受けてDXの行方を懸念した英国議会下院のHouse of Commons Science and Technology Committee(以下「科学技術委員会」)は、英国政府のDXを対象に2018年7月から一年がかりで調査を行い、2019年7月にその結果をレポートにまとめるとともに政府に対して18の提言を行いました(※1)。政府はその提言に対し同年9月末に科学技術委員会に回答しています(※2)。
本調査研究は、上記の科学技術委員会の提言及びそれに対する政府の回答の分析を通じて、成功事例とされてきた英国政府GDSのDX推進における役割と課題を明らかにし、今後日本の政府・自治体がDXを推進するに当たっての示唆を得ることを目的としたものです。
※1 https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmsctech/1455/1455.pdf
※2 https://publications.parliament.uk/pa/cm201719/cmselect/cmsctech/2673/2673.pdf
<報告書目次>
はじめに
1.議会の調査と提言に至る経緯
2.議会の提言とそれに対する政府の回答
2-1.個別の提言と政府の回答一覧
2-2.議会の提言に対する政府の同意・不同意の状況のまとめ
3.GDSの役割に関する提言とGDSの体制
4.省庁間のデータ共有と『国家データ戦略』
5.DCMSの登場と現在の分掌、CDDOの設立と今後
おわりに
付属資料
<お問合せ先>
一般社団法人 行政情報システム研究所 調査普及部
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