研究所レポート

2019.06.18

ブロックチェーン技術が行政に与える影響に関する調査研究

本調査研究は、ブロックチェーン技術の概念や特性等を整理したうえで、汎用的なユースケースとして設定し、実際に導入する場合に想定される前提や制約条件を明確にすることで、行政におけるブロックチェーン技術の活用可能性について明らかにするために実施したものです。

(一社)行政情報システム研究所は、ブロックチェーン技術が行政に与える影響に関する調査研究を平成30年度に実施し、その結果を調査研究報告書としてとりまとめたのでお知らせします。

 

 <背景・趣旨>

 我が国の行政機関は、人的・予算的資源の制約が強まる中、ますます多様化・複雑化する行政課題に取り組むことが求められており、その課題解決の糸口となり得る新たなデジタル技術の活用への期待が高まっている。

こうした技術の中で昨今、官民で特に注目を集めているものの一つがブロックチェーン技術である。ブロックチェーン技術とは、公開鍵暗号やP2P等の要素技術を特定の方式で組み合わせることで、登録・更新等の記録の耐改ざん性や耐障害性を担保する技術である。同技術については、諸外国の政府・自治体や民間企業において、活用に向けた実証実験その他の取組が活発に行われている。我が国政府でも、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(平成30615日閣議決定)において「III. 抜本改革を支える新たな基盤技術等」の一つとして「ブロックチェーン等の新技術の利用」が掲げられており、いくつかの行政機関や自治体で実証実験等が行われているところである。※

しかしながら、行政のどの分野にブロックチェーン技術の活用可能性があるかについては、典型的な事例は挙げられているものの、いまだ体系的な整理は行われていない。そして、検討が進んでいない背景には、ブロックチェーン技術そのものの多義性や曖昧さがある。識者によって、ビットコインを構成する技術をすべて使用する場合にのみブロックチェーンと呼ぶこともあれば、ハッシュ値を用いた改ざん防止技術のみを用いた場合をも含むこともあるといった状況だからである。

そこで本調査研究では、第一に、ブロックチェーン技術そのものの概念や特性等について、特に行政での利用という観点を念頭に置きつつ体系的に整理する。第二に、実際の事例をもとに、現時点で想定し得る具体的な利用用途を汎用的なユースケースとして設定した上で、ブロックチェーンの特性や機能・性能等がどのようなユースケースと関連しているのかを分析する。そして第三に、整理したユースケースにおいてブロックチェーン技術を導入する場合に想定される前提や制約条件を明確にする。最後に、これらの結果を踏まえて、今後の公共分野におけるブロックチェーン技術活用の可能性と課題を検討する。

結論として、ブロックチェーン技術の行政での利用には様々な課題が横たわっており、ただちに行政に大きなインパクトを与える可能性は低いが、他方で、将来的にはインターネットに比肩し得るような大きな変化を行政の業務・サービスに与える可能性を秘めていると考えられる。

本調査研究の成果が、行政機関や自治体において、従来の技術では解決できなかった課題を、ブロックチェーン技術を活用することで解決しようとする際の検討の一助となれば幸いである。

 

※ 「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画(令和元年6月14日閣議決定)においても、「V. 社会基盤の整備」の「2 基盤技術等」の一つとして「(4) ブロックチェーンなどの新技術の利用」が掲げられている。

 

<報告書目次>

[本編]

第1章 本報告書の構成と調査研究の流れ

第2章 ブロックチェーンの技術特性

第3章 ブロックチェーンの活用事例と行政分野への適用考察

第4章 行政におけるブロックチェーン導入時の前提・制約

第5章 公共分野におけるブロックチェーン活用の可能性と導入時の留意事項

第6章 今後の展望

 

 <お問合せ先>

一般社団法人 行政情報システム研究所 調査普及部

TEL: 03-3500-1121 E-mail: adp<@>iais.or.jp

(注)送信の際には、「<@>」を「@」に置き換えてください。) 

 

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