人工知能(AI)技術については、ここ数年来の第三次人工知能ブームの高まりを受けて機械学習の領域を中心に技術革新が急速に進んでおり、製造やマーケティング、医療等、様々な領域でサービスの開発と実際の現場導入が進められています。こうした中、行政分野でのAIの適用については、体系的な調査研究は現状ほとんど行われていません。
人的・予算的制約が厳しさを増す中、ますます複雑化・多様化する行政課題に対応していくことが求められる行政機関にとって、AI技術の利活用は、業務・サービスの飛躍的な高度化・効率化をもたらす可能性があります。
本調査研究は、こうした状況を踏まえ、
・AI技術はどの程度、どの範囲で行政に適用可能なのか
・AI技術はどのように導入したらよいのか
・AI技術の導入に当たっての課題は何か
といった点を明らかにすべく、利用者視点での技術動向調査、政府全体を視野に入れた業務分析、有識者やユーザー企業、ITサービス企業等を対象にしたインタビューやアンケートを実施したものです。
報告書では、行政機関においてAIを適用できる可能性がある業務を約80種類抽出するとともに、AIはどのような業務に適用できる可能性があるのかを簡易に判別するための汎用的な判断基準をとりまとめています。これらは、どのような行政機関にも適用可能な汎用性と、実務で直接利用可能な実用性を兼ね備えたものとなっています。
本調査研究の成果が行政分野における業務・サービスの高度化に向けた検討の一助となれば幸いです。
調査研究のねらい・概要
AI技術の動向に関する利用者視点での調査、政府全体を視野に入れた業務分析、有識者やユーザ企業、ITサービス企業等を対象にしたインタビューやアンケート調査の結果を踏まえ、AI技術を適用できる可能性がある業務を抽出するとともに、AIの適用可能性を判断するための基準をとりまとめています。
目次
第1章 人工知能に関する技術動向と行政への適用条件の整理
第2章 人工知能の適用可能性の判断基準の作成
第3章 人工知能の行政分野への適用可能性の検討
第4章 人工知能技術の導入の流れの整理
第5章 人工知能技術の活用に当たっての制度的課題
調査研究実施以降の関連する政府の取組
AIの利活用については、平成28年12月に成立した官民データ活用推進基本法において、他の先端的な技術とともに「活用が促進されなければならない」と規定されています(同法第3条第8項)。
また、国の行政機関や自治体においても、それぞれの課題に応じて、AIの利活用に向けた中長期的な方針の策定や、問合せ自動対応(チャットボット)、インフラ異常検知、発言要旨自動作成など様々な実証実験が行われています。