行政機関における予算や人員の制約が年々厳しくなる中、複雑化・多様化する行政課題に的確に対応し、国民の期待に応えていくためには、行政運営にデータを利活用していくことがますます重要となってきています。その実践にあたっては、利活用の源泉となるデータの品質や目的適合性の確保が不可欠となりますが、多くの行政機関における情報システムの企画・開発・運用の現場では、そうした取組みの必要性への認識が稀薄なままとなっています。
近年、民間企業では、データ利活用のためのデータの品質や目的適合性などを確保する取組みである「データマネジメント」の研究と実践に向けた活動が拡がりつつありますが、情報システムを構築・運用・保守し、そこから発生するデータの品質を利活用に向けて高めていくことの必要性は、行政機関においても本質的に変わるところはありません。そうであるならば、民間企業で取り組まれているデータマネジメントを行政に導入することが有効な解決策になり得ます。
本調査研究では、こうした課題認識に立脚し、まず行政機関でデータに関して起きている問題への対応策としてデータマネジメントの取組みがどの程度有効であるか、また、民間で研究・実践されているデータマネジメントのフレームワークが行政にどの程度適用できるかを検証し、今後取り組むべき課題と解決の方向性を検討しました。さらに、行政分野におけるデータマネジメント普及に向けた第一歩として、行政機関がまず着手すべき即効性のある取組みをハンドブックの形で提示しました。
本調査研究を通じて得られた知見が行政機関において利活用され、「データを駆使した行政運営」の実現に向けた取組みの一助としていただければ幸いです。
調査研究のねらい・概要
政府は2015年の世界最先端IT国家創造宣言において、データの利活用を含めたデーや駆動型の行政運営に取り組む方針を明確にしています。また、多様化、複雑化する行政ニーズへの対応を求められている状況で、行政には正確で質の高いデータの蓄積、データマネジメントの実施が必要となっています。
本調査研究では、冒頭に行政がデータマネジメントに関して抱えている問題について、情報システムのトラブルが表面化したケースについて調査し、データマネジメントの不備が関係していることを明らかにしています。次に、調達仕様書におけるデータマネジメントの考慮の度合いについて、JDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)のデータマネジメントに関する概説書を参考に、チェックリスト化した確認の観点を基に分析を行うとともに、政府CIO補佐官等へのインタビューを通じてデータマネジメントを巡る課題を抽出しました。これらの分析を行った上で、JDMCの概説書で示されているデータマネジメントに関する民間のフレームワークの行政への適用可能性を検討し、報告書として取りまとめると同時に、行政機関向けのハンドブックを作成しました。
目次
- はじめに―本調査研究の背景と目的―
- 調査研究の全体像
- 調査研究Ⅰ:情報システムに係る問題事例からの事例研究
- 調査研究Ⅱ:システム調達仕様書への記載状況調査
- 調査研究Ⅲ:有識者ヒアリング調査研究
- 調査研究Ⅳ:民間フレームワークの有効性検証
- 今後の課題について
- 当面実施すべき取組みについて
別添資料1 行政機関向けデータマネジメント導入ハンドブック
別添資料2 今後に向けた課題について
※行政機関向けデータマネジメント導入ハンドブックはこちらからごらんいただけます。
調査研究実施以降の関連する政府の取組
- 官民データ活用推進基本法の成立
(2016年12月7日成立、12月14日公布・施行)
- 世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画の策定
(2017年5月30日閣議決定)