調査研究のねらい・概要
本調査研究は、我が国の政府におけるIT投資の効果向上に資するよう、各国のIT投資のベネフィット(金銭的価値に加えて職員のパフォーマンスや利用者満足度、社会的価値も含む実益)のマネジメントに関する取り組み状況を調査したものです。
具体的には、OECDが2007年に実施した「実益具現マネジメント」に関する調査結果を基に、各国のベネフィットマネジメントの取り組み状況を整理すると同時に、特に先進的な取り組みを行っている英国におけるベネフィットマネジメントの具体的な方法論について、実際に行われた事例を交えながら紹介しています。
なお、巻末には本テーマに関して当研究所で開催した第6回仮想政府セミナー「情報システム投資から得るベネフィット」における英国法務省IT部長スティーブン=ジェナー氏の講演およびパネルディスカッションの内容を収録しています。
目次
本報告書の構成
パート1 各国のベネフィット(実益)マネジメント
- はじめに
- OECD報告書にみる実益具現マネジメントの各国の取組
- 米国政府の取組
- 日本政府の取組
パート2 電子政府から実益を具現する方法論
英国OGCの示す実益具現マネジメント
「電子政府から実益を具現する」の概要
電子政府から実益を具現する―イントロダクション―
第1部 実現可能でしっかりとした実益を目標に選ぶこと
第2部 価値のあらゆる形態を捕捉する
第3部 実益を具現し価値を生み出す
パート3 付録
- 2010年度仮想政府セミナーについて
- 「情報システム投資から得るベネフィット」講演資料
調査研究実施以降の関連する政府の取組
報告書で紹介した「政府情報システム改革検討会」においてIT投資管理の確立・強化や、ITガバナンスを支える基盤の強化、調達の改善といった項目を盛り込んだ提言が取りまとめられて以降、投資計画の策定や、大規模プロジェクトに関するレビューの実施に関する提案が公表され、政府CIOのリーダーシプのもと、実行に移されています。
政府情報システム刷新有識者会議(IT総合戦略本部)
有識者会議の議論を踏まえて2012年8月に公表された「政府情報システム刷新のための共通方針(提言)」では、投資の類型に応じた目標と評価基準を取りまとめた中期IT投資計画を「政府情報システム刷新実行計画」に盛り込むことや、リスクマネジメント強化のための政府CIOおよび各府省CIOの下でのレビューの実施、第三者による評価の実施とITダッシュボードにおけるレビュー・評価結果の公表が提案されました。
世界最先端IT国家創造宣言
2013年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」では、政府情報システム改革に関するロードマップの着実な実施に向けた投資計画の策定・推進、日本版ITダッシュボードの整備、レビュー制度の導入、IT総合戦略本部の下での新たな評価体制の整備による大規模かつリスクの高いプロジェクトに対するモニタリングを行う方針が示されました。
ITダッシュボードの運用開始と政府CIOによるレビューの実施
世界最先端IT国家創造宣言に基づき、2014年7月に、各施策の取組内容、予算、KPI、進捗状況の評価など、IT投資に関する情報を掲載したITダッシュボードが運用を開始したほか、大規模システムを中心として、サービス向上とコスト削減を目的とした政府CIOによるレビューが実施されています(2016年3月時点で380回以上実施)。