調査研究のねらい・概要
我が国の行政機関ではメールなどのコミュニケーションツール、文書作成などのオフィスツールに加え、機関内部向けのポータルサイトやナレッジマネジメントツールが整備されつつあります。しかしながら、これらのツールが、一般的にホワイトカラーと呼ばれる企画立案、意思決定を行う職員の生産性向上にどの程度寄与しているか疑問視する見方も存在しています。このような中で、行政機関において現在の環境に適合したツールの活用方法と、ツールの活用に必要な視点を提案することを目的として行った調査研究です。
本調査研究では、最初に民間企業および行政機関における、オフィスツールやコミュニケーションツールをはじめとしたITの活用状況について、CIO補佐官へのインタビューを交え紹介しています。第2に、生産性向上に資するコミュニケーションツールの機能を、各ベンダへのアンケート及びインタビューに基づき提示すると共に、これらのツールを活用して生産性向上を行った民間企業および行政機関の事例について紹介しています。最後に、これらのツールを活用するための具体的な改善策を、周知・教育、ユーザの意識改革、ツールの使い勝手、利用シーンの視点から提案すると同時に、想定される行政機関内コミュニケーションの将来像を提示しています。
目次
- 現状認識
- コミュニケーションツールの現状と機能
- コミュニケーションツールの活用事例
- 生産性向上に向けた改善策
調査研究実施以降の関連する政府の取組
行政機関におけるITを活用した生産性向上の取り組みとして、近年ではオフィスツールやコミュニケーションツールの活用に留まらず、オフィス改革やテレワークをはじめとした働き方改革の取組みが進められており、2014年から2015年にかけて具体的な指針やロードマップが定められました。
- 世界最先端IT国家創造宣言(2014年6月改訂)
同宣言で定められた目指すべき社会・姿を実現するための具体的な取組として、行政機関におけるテレワークの推進等を含めたワークスタイルの変革が挙げられ、同年中に国家公務員のテレワークに係るロードマップ(後掲)を策定することが記載されました。
- 国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針(2014年10月 女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会決定)
同指針では、世界最先端IT国家創造宣言に基づく取組を計画的に拡大すると同時に、職場から端末等を持ち帰らずとも、自宅PC等から職場内のシステムにアクセスできる機能を2014年度中に政府共通プラットフォーム上で全府省等向けに提供を開始することとされました。また、企業や各府省等におけるテレワークの実施に係る先進的な取組を各府省等間で共有することとされました。
- 国家公務員テレワーク・ロードマップ(2015年1月 CIO連絡会議決定)
2014年4月に内閣官房IT総合戦略室が実施した「テレワーク取組状況等調査」において職員数に対するテレワーク実績人数の割合が約0.1%に留まっていることを踏まえ、政府横断的な制度・システムの整備、各府省等における段階的取組の推進、政府全体として推進するための管理体制の整備を柱として具体的な取組を進めるための2014年度から2020年度までのロードマップが策定されました。
- テレワーク等関係府省連絡会議(総務省)
テレワーク推進に向けた各府省の取組の共有や連携施策の検討・推進を行うため、内閣官房・内閣府・総務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省で構成する連絡会議が設置され、各府省の取組に関する情報の共有や、連携方策に関する検討が進められています。