AIS主催「公共DX未来会議Vol.1」が2021年4月20日(火)にオンライン開催されました。
キーノートスピーカーに世界のITリーダーであるオードリー・タン氏、そしてパネリストとして日本が誇るエンジニアである登大遊氏をお迎えし、第1回にふさわしい豪華なイベントとなりました。
開催日:2021年4月20日(火)16:30~18:00
会場 :Zoomウェビナーを利用したオンラインセミナー(同時通訳付き)
参加者:190名
企画・運営:一般社団法人 行政情報システム研究所
【タイムテーブル】
16:30-16:35 主催者挨拶
16:35-16:55 オードリー・タン 氏 キーノートスピーチ
16:55-17:25 パネルディスカッション
オードリー・タン 氏 × 登大遊 氏
庄司昌彦 氏 (モデレーター)
17:25-17:45 Q&A
17:45-17:55 ふりかえり
17:55-18:00 クロージング
公共DX未来会議とは?
「公共DX未来会議」はAISが今年度から開始するインタタクティブ型イベント。国内外のオピニオンリーダーをスピーカーにお招きし、参加者と共に公共DXを考え、学びを深める場として不定期に開催していきます。また、将来公共DXに新しいプレイヤーとして参画していくベンチャー企業やスタートアップ企業とのコラボレーションも積極的に進め、日本の公共DXを盛り上げていくきっかけを作りたいと思っています。
Vol.1は天才エンジニアが考える公共DX
今回の公共DX未来会議は「エンジニアが生み出す公共DXへの可能性」をテーマの一つに据えました。システムやデジタルサービスを公共組織内で内製化することは各国政府をみても、公共DX成功の一つの流れになっています。
オードリー・タン氏も登大遊氏も共に天才エンジニアとして活躍されています。
今回、協賛企業を募るにあたりイベント趣旨にご賛同いただくことはもちろん、「エンジニア組織」である企業様をパートナーに選ばせていただきました。協賛企業として参加してくださった五反田電子商事株式会社様はエンジニアとしての専門性を持つ方が社員の7割を超えており、新しいITベンチャーの一つの形を体現されています。
イベントの様子
当日はイベント開始直後から190名近い参加者の方がウェビナーに参加してくださいました。これには運営スタッフもスピーカーたちもびっくり!緊張感が高まりました。
イベントの企画段階でオードリー・タン氏とお話した際、「ぜひ参加者とコミュニケーションをとりながらインタラクティブな時間を過ごしましょう。」と提案いただいていたので、190名を超える参加者の皆さんからどんな質問が寄せられるのか、皆さんがどんな気持ちでこのイベントに参加されているのか、とても楽しみでした。
まずは協賛いただいた五反田電子商事株式会社の洞田潤CEOのご挨拶。「緊張しました!」とのことでしたが、アジアで活躍されるIT企業のリーダーだけあり、堂々とされていました。洞田CEOは元柔道家で身長187センチ、体重100キロ超級という屈強で男気あふれる次世代リーダーです。
キーノートスピーチ
いよいよオードリー・タン氏によるキーノートスピーチ。参加者の皆さんの顔はウェビナー上に表示されていませんが、期待感は手に取るように伝わってきました。運営メンバーからも、オードリーさんの登場に「おおおーーー!!!」とどよめきの声が上がりました。
オードリーさんの心地よい声、そして台湾でどのように公共DXを進めているかマスクアプリの事例を使い丁寧に、ユーモアを交えてプレゼンをしてくれました。
- ユーザーの声を聞く
- サービスデザインの重要性
- 人がデジタルに合わせるのではなく、デジタルを人に合わせる
など金言の数々をシェアしてくださいました。
パネルディスカッション
オードリーさんのお話に皆が心を熱くしたところで、パネリストに登大遊氏、モデレーターに庄司昌彦教授(武蔵大学)を迎え、パネルディスカッションがスタート。
登さんからオードリーさんにどうしても聞いてみたいことがあるそうで・・・。
「オードリーさん、感電したことありますか?」
登さん、いきなり何を!と誰もが思いましたが、オードリーさんは冷静にこう答えました。
「はい。あります。」
二人の冒頭でのやり取りです。
登さん:子どもの頃、感電したことはありますか ? または、子どもの頃、頭を強く打ったことはありますか ? もしあれば、詳しく教えてください。私は、大学で周囲の多数の教授やコンピュータ・マニアの学生に質問をしたところ、80% くらいが感電したことがあると答えました。常軌を逸脱した人の感電割合は非常に高いと思っています。オードリー・タン氏は、特に、常軌を逸脱しているので、是非教えていただければ幸いです。
オードリーさん:頭を強く打ったことはありませんが、小学校に入る前に、感電をしました。大人が、「ソケットに突っ込むと感電して危ない」と言うので、「それで死ぬことはありますか?」と聞いたところ、「濡れた指だと死ぬかも知れないよ」と言われました。そこで、乾いた指ならば大丈夫だと思い、よく指を拭いて、ソケットに突っ込んだところ、感電をしたのです。
天才にしかわからない異次元の話に参加者も驚いたことでしょう。13歳までに感電をすると異能化するという説が存在するそうです。(くれぐれも今から故意に感電しないようにしてくださいね!)
二人の天才を前に、モデレーターの庄司先生が冷静にコメントをしていく姿はさすがでした。登さんのブログに対談の内容が一部記されていますので、ぜひご覧ください。
まとめ
今回の「公共DX未来会議」は2人の天才と「DXに必要なこと」を考えることができました。ゲストの2人に共通しているのは「ユーモア」。DXを進める上で、ユーモアは重要なポイントなのだと実感しました。
完璧なものを構築しようとするよりも、アジャイル的にやっていくこと。周りの人を巻き込んで、「楽しさ」を共有していくこと。
最後にオードリーさんが教えてくれた言葉が、まさにそれを表しているように思います。彼女がお気に入りのアーティストだと教えてくれたレナード・コーエンの詩の一節です。
Ring the bells that still can ring
Forget your perfect offering
There is a crack, a crack in everything
That's how the light gets in
まだ鳴らせる鐘を打ち鳴らせ
完璧な捧げ物なんて忘れてしまえ
すべてのものはひび割れている
光はそこから射しこんでくる
オードリーさんご本人による朗読はこちら
レナード・コーエンの「Anthem」はこちら
「ひび割れ(crack)=失敗や不完全さ」があるから、光が差し込むというメッセージは参加者の心に響いたのではないでしょうか。
DXやイノベーションはその光から生まれていくのかもしれませんね。
オードリーさん、登さんには「公共DX未来会議」への再登場をお約束いただきました。
次回「公共DX未来会議Vol.2」もどうぞお楽しみに。
文:増田 睦子 (一般社団法人行政情報システム研究所 主任研究員)
★今回のイベントの内容は「行政&情報システム」6月号に掲載されます。