これまでデンマークのデジタル社会やスマートシティの先進事例を紹介した時に、社会実装を促進する仕組みとして何度かトリプルヘリックスに触れてきた。その際、トリプルヘリックス=産学官連携、但し日本で展開されているものとはその仕組みやプロセスが根本的に異なると説明した。今回はこのトリプルヘリックスに焦点を当て、その構造や本質的な価値、そして日本での取り組み実例と日本社会への実装可能性について解説する。
1.一般的な産学官連携モデルとトリプルヘリックスの違い
産学官連携において「産」は民間企業やNPOなどのビジネスセクター、「学」は大学などの研究機関、「官」は政府系研究機関や自治体など公的機関で構成される。文部科学省は知識社会の到来と共にITとグローバリゼーションの進展により、企業経営は変化に迅速に対応する必要性と独創的技術シーズ創出に大学などを戦略パートナーとして連携するようになってきているという。そして産学官の具体的な例としては、1)企業と大学等との共同研究、受託研究などの活動、2)企業でのインターンシップ、教育プログラムの共同開発など教育面での連携、3)TLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)など大学等の研究成果に関する技術移転活動、4)兼業制度に基づく技術指導など研究者によるコンサルタント活動、5)大学等の研究成果や人的資源等に基づいた起業に分類出来るという。(5分類の出所:文部科学省 産学官連携の意義より)