近年、日本の自治体の間においてデータを利活用して医療をめぐる社会課題の解決を図ろうという動きが広がりつつある。その一方で柔軟性のある制度的仕組みづくりや、スケーリング可能なICTプラットフォーム構築などの面で壁にぶつかっている。ここでは保健医療領域のデータ利活用で先行する北欧諸国のうちデンマークの事例を取り上げ、社会実装を支えてきたデジタルプラットフォームやセキュリティ・プライバシーをめぐる背景や経緯について紹介する。
1.共通番号制度を軸とするオープンデータ・エコシステムの発展
デンマークは、1968年にCPR(Central Person Register)という国民共通番号制度を導入し、住民個人ごとに付与された一意の番号の下で、登録情報全体が一元的に管理できる仕組みを構築している。この個人識別番号とデジタル署名による個人認証システムを利用して、デンマーク政府は、市民ポータル「Borger.dk」・企業ポータル「Virk.dk」・税金ポータル「Skat.dk」・健康医療ポータル「Sundhed.dk」・教育ポータル「EMU.DK」などの電子政府サービスを構築・運用してきた。