1.「2025年の崖」
「2025年の崖」をご存じだろうか。これは、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」が2018年にまとめた「DXレポート」の副題に添えられた言葉だ。企業にある既存の情報システムが、事業部門ごとに構築されているため横断的データ連携ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされていることなどにより、複雑化・ブラックボックス化したりしているため、DXを進めようとしても実行することが難しくなる。この課題を克服できない場合、2025年以降に最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある。逆に、うまく既存システムを刷新しDXを実現できれば2030年には実質GDP130兆円超の上積みが実現できる。これが「2025年の崖」のメッセージである。そして、同様の課題が行政機関、特に自治体においても少なからず存在している。今回はこの「2025年の崖」をテーマに私見を述べてみたい。
「2025年の崖」という言葉を最初に聞いたとき、壁くらいなら壊したりもできるが、崖を飛び越えるのはかなり大変だなと感じたのを覚えている。実際、このキーワードは当時大きな反響を呼び、今でもDXを語るときによく引用されている。そして、気が付けば、時間の猶予はあまりなくなっている。