1.北欧知見の見えない資源を理解する
北欧の経験や知恵を活用して先進システムやソリューションを日本社会に実装する秘訣紹介の第2回は信頼の構築と運用である。
最近、デンマークだけでなくフィンランド、ノルウェー、スウェーデンなど北欧諸国全般の社会システムが注目されている。高い幸福度、欧州トップクラスのデジタル化、イノベーション創出の観点で優れていることが背景だと思われる。日本でも複数の地方自治体で北欧モデルの応用を前提とした施策やプロジェクトが行われているが、十分な成果はまだ得られていないのが実状だ。国家の規模、歴史、風土、文化、産業構造などが異なるので容易に北欧の経験やノウハウを導入出来ないことが背景だ。
しかし、デンマークは1950年代に製作された有名な家具や照明を含めたデザインは日本からも多くのことを学んでいるし(この事実は殆ど知られていないが、1870年代から100年かけてデンマークは日本の工芸品や浮世絵などからインスピレーションを得ていた。つまりデンマークデザインの源流には日本の伝統工芸品の本質的価値も含まれているのである。)、最近ではオーデンセで発展しているロボットクラスターのODENSE Roboticsが日本からロボット産業発展のノウハウを習得していた。2010年前後からは、当時小職が所属していたデンマーク外務省投資局の支援で、戦略的クラスターの構築、ロボット技術の展開方法、海外パートナーとの連携システムなどについて、日本のロボットクラスターやロボット開発企業から成功要因を学び、デンマーク流に置き換えて実装していた。これらのことから筆者が常々主張している通り、異なる社会構造を持つ他国のシステムも、その本質面を分析し、日本に適合するようにローカライズすれば十分実装することが可能である。しかし、海外の有用な社会システムを応用する上で大切なことは、見えていないが社会を有効に機能させている特質をどのように認識、抽出し、活用するのかということだ。