AI活用の推進とAI倫理の問題は切り離すことができない。民間企業においても、AI倫理を全社的にどう捉え、問題の発生をどう防いでいくのかは大きな課題となっている。
NECグループは、AI技術や生体認証技術で知られるリーディングカンパニーだ。同社では、AI倫理のガバナンスを担う部署を設け、全社包括的な取組を行っている。ポリシーの策定や事業活動への実装、人材育成など、同社で行っているAIガバナンスの取組をリードしてきた同社デジタルトラスト推進部の徳島大介氏に聞いた。
1.AIガバナンス策定の経緯と全体像
- なぜAIガバナンスの取組を進めようとされたのでしょうか。
NECグループは「安全・安心・公平・効率という社会価値を創造し、誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現を目指します」というPurposeを定義しています。このPurposeを果たすためには、技術、製品、サービスの開発、提案、インテグレーション、稼働後の運用など、あらゆる段階で性能や機能を高めるだけでなく、人権・プライバシーリスクを低減し、不安を解消するための取組は重要だと考えています。しかし、AIは新しい技術領域のため現状では技術の進化のスピードに法整備が追い付いておらず、法規制が未整備なグレーゾーン領域があることを受け止めたうえで新しい技術を適切に社会実装していくことが必要と考えています。そこで、新しい技術を社会実装するうえでは、世の中から受け入れてもらえるような技術の使い方を見極めることが非常に大切になってきます。既存の一般的なコーポレート部門では扱わない法規制が未整備なグレーゾーンへの対応や、社会受容性に配慮した対応を含め、AIの利活用に関連した事業活動が人権を尊重したものとなるよう、全社戦略の策定・推進を担う専門組織として、2018年10月にデジタルトラスト推進本部(現・デジタルトラスト推進部)を立ち上げました。この組織が中心となり、社内の関係部門や社外のステークホルダーの方々と連携しながら取組を進めています。