日本でも官民ともにAIの導入が始まっている。AIの社会実装が本格化するにつれて、「人間から仕事を奪う」といった不安への対応も含め、その取り組みを人間中心としたものにすることを、特に公共セクターは意識することが求められている。
一方で、AI分野の技術開発は米中を軸にいっそう加速し、AI向けのプログラムを人間ではなくAIが作成できる段階にまで達しつつある。人間の仕事の役割や存在意義さえ問われようとする中、人間中心のAI社会をどのように実現させていけばいいのか。
AIを巡る諸課題について日本政府や国際機関への政策提言を積極的に行い、東京財団政策研究所政策主幹や東京大学特任教授も務める中央大学国際情報学部教授・同大ELSI センター所長の須藤修氏に、AIの技術および社会実装の現状認識と将来展望を聞いた。
1.AIの進化の加速で人間の“存在の問い直し”がさらに高まる
- AIの社会実装について研究・立案を続けてきた立場から、AIをどのような存在だと捉えていますか。
今、AIの開発において非常に大きな変化が起きていて、これまでのAI観というものが変わり始めています。AIが発達すれば人間の仕事がどんどん奪われていくなどと言われてきましたが、それでもAIをつくる、AIのプログラムを書くのは人間だということになっていました。ところが昨年あたりからグーグルとかOpenAI、IBM、スタンフォード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)あたりではAIがAIのプログラムを書くようになってきた。自分で自分のプログラムをどんどん変更してバージョンアップする人工知能がますます力をつけてきています。