1.デジタル人材が足りない
日本のDX推進において、それを担うためのスキルを持った人材、いわゆるデジタル人材が不足していることは官民至るところで聞かれる大きな問題だ。よく引用されるIMDの「世界デジタル競争力ランキング2022」において、日本は全64カ国中29位と決して先進的ではない位置づけにある。中でも人材に関する評価は何と50位にまで落ちてしまう。また、IPAの「DX白書2021」によれば「事業戦略上、変革を担う人材の確保」について、質・量ともに不足しているとの日本企業の回答は米国を大きく上回り75%以上に達している。
一方、OJT以外の人材投資を国際比較してみると、日本は諸外国を大きく下回りGDPの0.1%程度しか行われていない。さらに、社外学習・自己啓発を行っていない人の割合は、日本は46%と世界の中でもダントツに高い。結果を見る限り、企業は従業員の育成に力を入れておらず、従業員自身も自発的に勉強するのが嫌いといったように見えるが、これは、日本社会の人材は、雇用された組織での就労(OJT)を通じて、今の仕事に必要なスキルを教えてもらうという構図がまだまだ一般的だと考えるべきなのだろう。
そして、デジタル化の進展はあらゆる仕事を大きく変化させようとしている。世界経済フォーラムでは、2018年頃から社会全体としてデジタル関連スキルのリスキリングに取り組む必要性があることを訴え続けている。また、米国では政府から民間企業に向けて、2025年までに従業員にリスキリングの機会を提供するという誓約への賛同を呼びかけている。デジタル技術の活用に関して従業員をリスキリングすることは既に世界中の企業にとって義務になり始めていると考えていい。