機関誌記事(記事単位)

2022.12.10

2022年12月号 連載企画 行政情報化新時代 no.60 広がる「シビックパワーバトル」

武蔵大学 社会学部
教授
庄司 昌彦

 オープンデータの活用は、大まかに「データをアプリ等によるサービス提供に使う」か、「データを分析に使う」かに分かれる。後者には、マーケティングや社会調査、EBPM(Evidence Based Policy Making)などが含まれる。今回は「データを分析に使う」具体的な方策の一事例として、デジタル庁のオープンデータ活用事例集「オープンデータ100」にも掲載され、筆者も大学で実践している「シビックパワーバトル」について紹介する。

1.シビックパワーバトルとは

 シビックパワーバトルとは、「オープンデータを活用して街の魅力を発掘し、地域へ発信するイベント」である。市民と行政職員などが地域ごとにチームを形成し、自分たちの地域が相手チームの地域より優れている点などをデータに基づいて説明する資料を作成して、プレゼンテーションバトルによって優劣を競う。新しい形のシティプロモーションの取組みであるといえるだろう。
 「バトル」と名前がついているように、プレゼンテーションでは、自分たちの地域が優れている点や紹介したい点を単にアピールするだけでなく、他の地域との比較においてどう優れているのかを説明する必要がある。つまり、何らかの指標を用意し、データに基づいて複数の自治体を比較する必要があるのだ。
 プレゼンテーションバトルに勝つためには、自分の地域が他の地域より優れている点を見つけ出し、データに基づいて説得的に説明する必要がある。そのため、参加者は自分の地域についてさまざまな観点からデータを収集し、読み解き、ありきたりではない指標や切り口を探し出す。こうした活動が、未発掘だった地域の魅力の発見につながるのだ。バトルの発表者も視聴者も自分の地域の優れた点を新たに知ることができ、シビックプライド(都市に対する市民の誇り)の醸成につながることが期待される。

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