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2022.10.10

2022年10月号 研究員コラム ローコード開発ツールと導入自治体規模の関係性についての一考察

一般社団法人行政情報システム研究所
研究員 小池 千尋

1.はじめに

 近年、ITスキルをほぼ必要とせず、GUI 操作でサービスやアプリの開発を完結させることができる「ローコード・ノーコード開発」(以降、ローコード開発)への関心が高まっている。そのメリットとしては、導入にかかる時間及び費用が少ないこと、業務に応じて柔軟なカスタマイズがしやすいこと、開発及び管理の内製化も可能であることなどが挙げられる。行政機関においても、ローコード開発を活用することで、行政サービスのデジタル化による利用者の利便性向上や、庁内業務の効率化を機動的かつ柔軟に実現しようとする機運が高まりを見せている。
 このように、ローコード開発は様々な便益をもたらす一方で、既に導入が先行する民間企業においては、ローコード開発ツールを安易に選定した結果、導入後になってミスマッチが明らかになるという課題も指摘されている。例えば、ローコード開発ツールが備える標準機能の限界を検討せずに導入してしまうと、結果的に自作のプログラムを作成することが多くなり、属人性も高くなってしまうため、ツールを導入するメリットが削がれるほか、その後のツールのバージョンアップにも影響する。このようなリスクは、自治体においても、今後、ローコード開発の導入が進むにつれて顕在化してくると考えられる。ローコード開発ツールと導入先組織とのミスマッチをいかに防ぐかが重要な課題になる。
 ここで検討すべき点は、ツールの標準・拡張機能や導入・運用コストはもとより、ツールの操作性、利用環境その他の制約条件、関連システムとの親和性、提供会社によるサポートなど多岐にわたり、的確に評価することは容易ではない。こうした中、検討対象とするツールに、自治体規模による向き・不向きがあるかどうかが分かれば、ツール選定にあたっての有力な手掛かりとなり得る。
 そこで本研究では、ツールによって大規模自治体向けや小規模自治体向けといった傾向の差異が存在するかを明らかにする。

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