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2022.04.15

2022年4月号 特集 誰一人取り残されない デジタル社会の実現 に向けて

デジタル大臣
牧島 かれん

1.はじめに

 「行政&情報システム」は、国・地方のデジタル・ガバメントに携わっている行政機関、IT関連企業、研究機関などの幅広い層の読者に購読されている専門誌と承知しています。読者の方の中には、コロナ禍以降のデジタル・ガバメントを巡る変化の速さに戸惑いを感じていらっしゃる方も少なくないのではないかと思います。皆様の戸惑いにしっかりと向き合い、協働してデジタル化を推進するためには、第一に、デジタル庁が何を考え、どこを目指そうとしているのか、何を実現しようとしているのか、明確なビジョンとともにしっかりとお伝えさせていただきたいと考えております。

 

2.デジタル化の理念と原則

「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」。これはデジタル庁設置前の2020年12月に、デジタル社会の将来像やデジタル庁設置の考え方の方針として策定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」であり、政府の揺るがぬ信念として、現在、デジタル庁のミッションそのものともしている基本理念です。
 この基本理念に基づき、昨年12月にデジタル庁発足後初の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」(以下「重点計画」)を取りまとめました(令和3年12月24日閣議決定)。これからのデジタル社会を、①「デジタル化による成長戦略」、②「医療・教育・防災・こども等の準公共分野のデジタル化」、③「デジタル化による地域の活性化」、④「誰一人取り残されないデジタル社会」、⑤「デジタル人材の育成・確保」、⑥「DFFTの推進を始めとする国際戦略」という6つの方針によって実現することとしています。
 また、施策の実践に当たっての行動原理となる「デジタル改革基本方針(10原則)」として、①オープン・透明 ②公平・倫理 ③安全・安心 ④継続安定・強靱 ⑤社会課題の解決 ⑥迅速・柔軟 ⑦包摂・多様性 ⑧浸透 ⑨新たな価値の創造 ⑩飛躍・国際貢献を定めています。これらは、デジタル庁発足前から数年にわたって積み上げてきた検討と実践の結果を継承し、堅持していくことを再確認したものとして規定しています。
 これらの基本的な方針に基づいた重点計画は、デジタル社会の形成のために政府が迅速かつ重点的に実施すべき施策等を定めており、司令塔であるデジタル庁のみならず各府省庁の取組も含めて、工程表などスケジュールと併せて明らかにしています。我が国の目指すデジタル社会の実現に向けて構造改革や施策に取り組むとともに、それを世界に発信・提言するための羅針盤となるものです。

 

3.成長戦略を実現する構造改革

 デジタル・規制改革・行政改革を担当する大臣として、これらの基本的な方針に基づき、国民一人ひとりがデジタル化の恩恵を感じることができるよう、デジタル・規制改革・行政改革を一体的に推進し、デジタルによる構造改革と成長戦略を進めていきます。
 既存の規制や行政などが維持されたままでは、経済、社会、産業全体のデジタル化、そして、国民が、デジタルを活用したより良いサービスを享受することや成長を実感することはできません。「国民」「社会」「産業」「自治体」「政府」といった官民にまたがる構造改革を行うため、「デジタル臨時行政調査会」を昨年11月に立ち上げ、デジタル・規制・行政の全ての改革の共通指針として「デジタル原則」を昨年末に策定しました。
 この「デジタル原則」への適合という観点からの4万以上の法律、政省令、通知・通達等の速やかな点検を実施し、規制の一括見直しを行うためのプランを取りまとめます。また、医療・教育・防災・こどもなどの準公共分野において、データ連携プラットフォーム構築などシステム・制度の一体的検討を行っていきます。
 この「デジタル臨時行政調査会」と車の両輪であり、成長戦略としての「デジタル田園都市国家構想」も進めていきます。デジタルの力を全面的に活用し、「大都市の利便性」と「地域の豊かさ」を融合した「デジタル田園都市国家構想」の実現を目指すべく、インフラ、公共サービス、各種の生活サービスからなるデジタル基盤を整えていきます。国が必要なツールや基盤を用意し、それを地域の発意で活用していただき、国・地方一体となって進めていきたいと思っています。

 

4.迅速かつ柔軟な課題解決

 これらの改革を果敢に進めていくに当たっては、官民をクロスオーバーする関係者と想いを同じくして、迅速かつ柔軟に取り組んでいく必要があります。デジタル庁の発足に際し新たに定めたビジョンは、「Government as a Service」、そして、「Government as a Startup」です。スタートアップ企業のように、大胆かつスピーディーに新しい改革に挑戦し、あらゆる関係者を巻き込みながら有機的に連携し、ユーザーの体験価値を最大化するサービスを提供していきます。
 新型コロナウイルス対応を一例としてご紹介させていただくと、引っ越しをした住民に関して、本人同意がなければ過去の他自治体での接種履歴の照会ができず、3回目ワクチン接種の案内が必要な方へ届けることが難しいなど、混乱を招く懸念がありました。これについて、ワクチン接種券送付のため、転出前の市町村の接種記録を照会することについては、マイナンバー法[1]におけるマイナンバー利用が本人同意を得ずに行える限定的な規定である「人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合」に該当するという法解釈を明確化しました。これは、自治体からの要望を受け、関係者と迅速に整理を行い、システム改修も含めて柔軟に対応していただいた全ての方々のおかげで実現できたことです。
 また、紙での発行を開始していた予防接種法に基づく接種証明書について、スマートフォンで申請し交付を受けられる「接種証明書アプリ」を、2021年12月20日にリリースしました。このアプリにより、リリース当日に約50万件以上、1 ヶ月で300万件以上のデジタルの証明書を利用いただいており、多くの方に使っていただけるのではと、考えています。このアプリは、アジャイルで、可能な限り早くサービスを開始するとともに、順次必要な機能を追加し、より使いやすいものとなるよう随時アップデートをしていく方針として整備しました。リリース後もUI・UXが良くなるよう、着実に改善を進めています。

[1]行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成二十五年法律第二十七号)

 

5.オープンな共創

 私たちデジタル庁は、こうしたデジタル化の方針や実際の取組を、たくさんの議論やワークショップを積み重ねながら創り上げてきました。デジタル改革基本方針の筆頭に掲げているのが、「オープン・透明」です。取り組むべき課題は山積しており、そのどれひとつとってもデジタル庁のみで解決できるものはありません。多くの関係者の方々のご支援と参画が必要です。これまでも、デジタル庁にとっての国民・住民の皆様との窓口である「アイディアボックス」、自治体職員と各府省庁職員の対話の場である「デジタル改革共創プラットフォーム」、IT企業やスタートアップ、シビックテックとの交流の場である「Govtech Meetup」などを立ち上げてきましたが、今後ともこうした活動を加速していきたいと考えています。
 多様な方々の参画を得ることで、我々がバリューとして掲げる「この国に暮らす一人ひとりのために、常に目的を問い、あらゆる立場を超えて、成果への挑戦を続け」ることを実現していきます。本誌の読者の皆様もぜひ、デジタル社会の実現に向けた活動に参画していただければ幸いです。皆様のご参画を心よりお待ちしています。

【参考】
・デジタル庁のミッション・ビジョン・バリュー https://www.digital.go.jp/about/organization/
・デジタル社会の実現に向けた重点計画 https://www.digital.go.jp/posts/79b7ZMv1
・デジタル改革共創プラットフォーム https://www.digital.go.jp/posts/4PB81KNy
・デジタル庁 ソーシャルメディア(デジタル庁が実施する各種イベントや施策等の最新情報を発信中) https://www.digital.go.jp/social-media-policy/

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