バウンダリーオブジェクト(以下BO)という概念を知っているだろうか。日本では境界オブジェクトとも呼ばれるこの概念は、「異なった領域をつなぐもの」として知られており、コラボレーションが求められる領域全般で注目を集めており、サービスデザインの領域でも議論されている。
本稿ではこのBOの概念を紹介しながら、サービスデザイン領域におけるBOの活用実践、そして今後の可能性について論じていこう。
1 サービスデザインとバウンダリーオブジェクト
(1)多様なプレイヤーの多様な関心
サービスデザインのプロジェクトは、公共領域であれ、商業的なプロジェクトであれ、通常さまざまなプレイヤーによって構成される。公共のデジタルサービスの開発であれば、サービスデザインのエキスパート、市役所の職員(行政の担当者)、ソフトウェア開発者などによってチームは構成される。さらに、市民を巻き込むプロジェクトの場合は、そこに一般市民も加わるだろう。