今年9月にデジタル庁が発足した。コロナ禍で日本のデジタル改革の遅れが露呈したという指摘もあり、デジタル庁は行政と民間のデジタル改革の旗振り役として期待されている。そこで、元マッキンゼーのパートナーで東京、大阪、愛知など各地の首長顧問として自治体改革を主導する慶應義塾大学総合政策学部教授の上山信一氏に、デジタル庁への期待や行政DXの今後の展望について話を聞いた。
1 日本の行政DXはそれほど遅れていない
デジタル庁の発足を機に「わが国行政のDXが遅れている。民間のIT人材も活用して整備を急ぐべき」という声がある。これには賛成だが日本の行政のIT化自体が著しく遅れているかというとそうでもない。たしかに国連データでは日本は行政DXの世界ランキングで第14位で上位にはいない。しかしわが国は戸籍も税も年金もいちおうシステム化されている。問題は省庁のシステムが縦割りで国と自治体の連携がなく、自治体間もばらばらで、おまけに個人認証の仕組みが統一されておらずユーザー側の使い勝手が悪いという点になる。