1.はじめに
私たちは、情報システムを「完成された製造物」だと認識している。
情報システムが必要となった行政機関や企業といったユーザは、要求仕様を決定し、ベンダにそれを提示した上で調達を行う。受注したベンダは仕様通りの情報システムを納期までに作りあげ、ユーザにこれを納品する。昔から自然に行われていたこの構図の根底には、ユーザ側にもベンダ側にも「情報システムは完成された製造物である」という共通的な認識がある。完成した情報システムが会計上、多くの場合減価償却対象となるのも、情報システムを製造物とみなしている証左であろう。
DXを推進し、デジタル・ガバメントを実現していくためには、この共通認識を抜本的に変える必要があるということを本稿では述べてみたい。答えを先取りするなら、情報システムは完成した製造物ではなく、日々周囲の環境に合わせて育て続けていくものだと再認識すべきだと考えている。