1.はじめに~デジタル化とデジタル格差の関係~
政府は、2020年12月に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」の冒頭で「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」というビジョンを掲げた。行政のデジタル化という文脈で、デジタル格差(デジタルデバイド)を念頭においたビジョンが政策文書の冒頭で示されたのは、数十年にわたるデジタル化(電子化)の取組みの歴史の中で、これが初めてである。というのも、デジタル格差は、デジタル化が進んでいないところでは発生せず、一定程度のデジタル化が進展してはじめて顕在化する課題だからである。(一社)行政情報システム研究所が2020年度に実施した「行政サービスにおけるデジタル格差に関する調査研究」(以下「本調査研究」)では、8つの基礎自治体に対し、デジタル化やデジタル格差の現状や課題認識、実施している施策等についてヒアリングを行った。その結果、デジタル化が進んでいる自治体ではデジタル格差への認識が高い一方、進んでいない自治体では、デジタル格差も認識されていないという傾向が明瞭に示された。