1.はじめに
行政や企業をはじめとする日本の多くの組織にとって、ダイバーシティ(多様性)の推進は重要な課題になっている。国籍・学歴・年齢・性別・身体障がい・人種・宗教・価値観など、さまざまな違いを持つ人材を幅広く採用している組織は、社会的貢献が大きいだけでなく、21世紀の情報社会においては創造性を高めイノベーションを生み出しやすいといった経済的なメリットがあることも明らかになってきた。
とはいえ、工業化で経済成長を果たした20世紀の日本では長年にわたって長時間労働が可能な男性が主たる組織構成員とみなされてきたので、21世紀に入ってもなかなかダイバーシティが進まなかった。日本経営者団体連盟(日経連)が2000年にダイバーシティ・ワーク・ルール研究会を発足させたのが民間企業の変化の契機になったといわれているものの、変化のスピードは遅かった。同団体は2002年に日本経済団体連合会(経団連)と統合し、それから15年後の2017年に経団連は「ダイバーシティ・インクルージョン社会の実現に向けて」と題した声明を発表した。ようやく、この頃から日本のさまざまな組織において社会・経済の両面でダイバーシティの重要性に対する認識が高まったといえるだろう。