新型コロナウィルス感染症によって、自分の、そして大切な人の生命を守る行動としてマスクの着用や不要不急の外出自粛という新しい規範が生まれ、これと矛盾する“はんこ出社”の問題が浮き彫りになった。判子を含む署名行為の有用性はウィズコロナの時代でも揺るぎない。しかし、その署名された文書の作り方や保管方法は、遠隔で操作できるデジタル型の手法に急速にシフトするはずだ。
今やインターネットに繋がっていれば、互いに離れた場所にいながら共同で作業を行うことができる。行政分野でも政府認証基盤を背景に申請手続きのオンライン化が進められているが、例えばワクチン接種証明(グリーン・パス)を国民に交付するような場面での応用となると意外と難しい。首長らが職務で行う署名や押印は個人のそれと同じではなく、また、データを役所に保管するのではなく連携する相手に通用性を認めなければ分業できない。
飯塚地域の産学官で取り組む行政文書の電子交付に関する実証事業は、飯塚モデルとして、市が証明書を交付すると同時に、その電子的な特徴を市が管轄する認証局が記憶する。それらの情報をオンライン処理により第三者に配布可能とし、通用性を担保するロジックの透明性を高める。ブロックチェーン技術を応用した次世代の産学官の連携が始まろうとしている。