1.はじめに
本シリーズは2019年8月号から2020年8月号まで連載した企画である。お陰様で好評を頂き第二弾として再スタートすることとなった。今回はデンマークのデジタル化に焦点を当てるだけでなく、先進デジタル社会のシステム的な構造や要素、例えば歴史、文化、風土、ライフスタイルなどを取り上げながら、多面的に捉えてみたいと考えている。まずは現在も世界を混乱に陥れているCOVID-19、新型感染症の問題を取り上げてみたい。
2.北欧諸国におけるCOVID-19の感染状況と抑制の要因
COVID-19危機も1年が経過し、各国の新型感染症対策にも違いが現れてきている。世界的に第3波と変異種の対応に苦慮する中、デンマークをはじめ北欧諸国(スウェーデンは若干状況が異なる)はなんとか感染爆発を防ぎながら社会的な安定を保っている。2021年2月17日現在の感染状況はデンマーク:感染者数205,183人、死者数2,308人、スウェーデン:感染者数617,869人、死者数12,487人、フィンランド:感染者数 51,047人、死者数720人、参考:日本:感染者数419,015人、死者数7,102人(出典WHO)となっている。
欧州主要国がウィルスの封じ込めと経済活動のバランスを確保することが出来ず、感染者数の増加を抑え込むために再びロックダウンにより人々の行動制限を行っている中、デンマークやフィンランドで感染者数が比較的低い数値で抑え込まれているのはどこに理由があるのであろうか?様々な背景はあるが一つの見方として国の資源が限られている小国の危機対応策に鍵があると考えている。COVID-19危機を制御出来ている背景として次の3点が挙げられる。(1)首相をトップとした危機対応のリーダーシップ、(2)COVID-19新型感染症危機に対する明確な戦略、(3)デジタルインフラの徹底的な活用だ。