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2021.04.15

2021年4月号 連載企画 海外公共分野ICT化の潮流 No.23 競争力強化に向けた各国・地域のデジタル改革

ジェトロ海外調査部国際経済課
伊尾木 智子

1.はじめに

データは「21世紀の石油」といわれるまでになり、台頭するデジタル技術はビジネスにとどまらず、私たちの生活や社会に大きく影響を与えている。デジタル覇権争いの激しさを増す米中、デジタル化を新型コロナ回復の柱とする欧州、社会課題をデジタル技術で克服する新興国の動きなど、世界では様々な変化がみられる。

本稿では各国・地域のデジタル分野における施策やビジネスを俯瞰し、可能な限り多面的にデジタルを巡る世界の動向を追う。

 

(1)デジタルを巡る世界の潮流

近年みられる急速なデジタル化は2つの潮流から捉えることができる。まず、巨大な影響力を持つ、いわゆるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの呼称)などのオンライン・プラットフォーマーが、バーチャルから「リアル」空間へ進出してきたことが挙げられる。これらの企業は、今までバーチャル空間のみにおいて、検索データや電子商取引(EC)による購入履歴などによって影響力を強めてきた。近年、それらのプラットフォーマーが現実世界の様々な産業へ参入を始めている。たとえば、米アマゾンは自動運転車にAIスピーカーを搭載するなど、モビリティ産業への参入が顕著に見られる。中国のEC大手アリババはビッグデータやAIを駆使した「ニューリテール」の概念を提唱し、オンラインとオフラインを融合したスーパーマーケット「盒馬鮮生」をオープンした。通常の店頭販売に加え、オンラインショッピングや調理加工、配送を行う。プラットフォーマーはその資金力と影響力を背景に、他企業との提携や買収を通じて、より迅速に他業種への参入を実現させているケースが多い。

2つ目の潮流として、伝統的な製造業や対人サービスを担う企業が、デジタル化により既存領域を拡大していく動きがみられる。顧客情報の分析による新たな価値の付加、シェアリングやサブスクリプションによるモノのサービス化、さらにはビジネスモデルの転換など、各産業で新たな事業領域への拡大が挙げられる。これを実現することにより、新しい価値を顧客に提供し、市場の拡大、顧客層の拡充を進める動きが世界的に活発になってきている。仏タイヤ大手のミシュランは、タイヤにIoTを搭載し、道路状況とタイヤの状態を把握で事故やトラブルを未然に防ぐシステムを提供している。また、東レはNTTと共同で心拍数・心電波形などの生体情報を取得できるスマートテキスタイルを開発するなど、デジタル技術を利用した新たなサービスを展開している。

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