1.はじめに
デジタル社会形成基本法案(以下「本法案」という。)は、デジタル改革関連法案の一つとして令和3年2月9日に閣議決定され、第204回国会に提出された。本法案は、平成12年に成立した高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号。以下「IT基本法」という。)のいわば後継法として、「誰一人取り残さない」、「人に優しいデジタル化」といった考え方の下、デジタル社会の形成に向けた基本理念や施策の策定に係る基本方針等を定めるものである。
本稿では、本法案の検討経緯や概要を解説するものであるが、詳細な内容については、内閣官房のHP(https://www.cas.go.jp/jp/houan/204.html)に掲載している条文案を参照されたい。
2.法案検討の過程
今般の本法案の策定に係る検討は、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(令和2年7月17日閣議決定)及び「経済財政運営と改革の基本方針2020」(令和2年7月17日閣議決定)に遡り、これらにおいてIT基本法の全面的な見直しを行う旨が規定されている。
令和2年9月には菅内閣が発足し、同月23日に開催された「デジタル改革関係閣僚会議」において、菅総理から、デジタル庁の設置とあわせて、デジタル分野における重要法案であるIT基本法の抜本改正も行うよう、平井デジタル改革担当大臣には思い切ったかじ取りを行う旨を、また全閣僚に対しては全力で協力を行うよう指示がなされた。
これを受け、デジタルガバメント閣僚会議の下で「デジタル改革関連法案ワーキンググループ」(座長:村井純 慶應義塾大学教授)が開催され、有識者を中心に法案の方向性が取りまとめられた。政府は、この取りまとめを踏まえ、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」(令和2年12月25日閣議決定)として、デジタル社会の将来像やIT基本法の見直しの考え方等についての方針を示し、上述のとおり、これを具体化した本法案を国会へ提出するに至ったところである。以下ではその概要について解説する。
図 デジタル社会形成基本法案の概要
(出典)内閣官房HP(https://www.cas.go.jp/jp/houan/210209_1/siryou1.pdf)