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2021.02.10

2021年2月号連載企画 CIO補佐官オピニオン No.6 クラウド・テンプレートによる政府情報システム設計構築の勧め

内閣官房IT総合戦略室
政府CIO補佐官 山本 教仁

デジタル庁の施策として、今後のデジタル社会へ向けての政府や地方自治体の情報システムを支えるガバメント・クラウド、(仮称)Gov-Cloudの整備が求められている。一方で、2018年にクラウド・バイ・デフォルトの原則が定義されて以降も、クラウドを単なるインフラ環境として使い、クラウドの本来のあるべき姿で活用し切れていないことも多い。Gov-Cloudでクラウドを活用するためには、これまでのやり方にクラウドを当てはめるのではなく、新しいインフラ設計構築手法に発想を変えていく必要がある。新しい考え方でクラウド活用するための取っかかりとして、ここではクラウド・テンプレートの考え方を紹介する。クラウドでは、インフラ構成情報をテンプレートとしてあらかじめ定義しておき、これを使って自動で迅速かつ低コストにインフラを設計構築できる。クラウド・テンプレートは単なる構築便利ツールではなく、クラウド・テンプレートを使ってインフラ設計構築手法を変えることで、迅速化、コスト削減、ガバナンスの維持を実現するためのものである。Gov-Cloud整備にあたっては、クラウド・テンプレートとその考え方が技術的な最重要要素と言える。最後に、今後、デジタル庁として実際にGov-Cloudでクラウド・テンプレートを活用できるようにするための3つの施策についても提言する。

1.クラウドの本質の再確認

2020年末、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」および「デジタル・ガバメント実行計画」が閣議決定された。これら基本方針や実行計画では、デジタル庁の設立が示され、国民に優しいデジタル社会の実現が述べられている。そのなかで、デジタル庁がリードして政府や地方の情報システムの標準化や統一、相互の連携を進めていくことになる。情報システムの標準化や統一にあたっては、クラウド・バイ・デフォルトの原則に基づいた情報システムの構築運用が重要になり、ガバメント・クラウド、(仮称)Gov-Cloudの整備が要求されている。Gov-Cloudに求められるものは、クラウドならではの迅速性や信頼性、運用負荷軽減、費用の削減である。これらを実現するためには、クラウドを、単なるインフラ環境の利用ではなく、アプリケーション開発効率化と環境構築・運用・保守の効率化・自動化に活用していかなければならない点についても言及されており、そこが今後のクラウド活用におけるチャレンジとされている。

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