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2021.02.10

2021年2月号特集 国の成長戦略における官民のデジタルトランスフォーメーション

内閣官房
成長戦略会議事務局次長(内閣審議官) 野原 諭
取材・文 狩野英司、増田睦子(行政情報システム研究所)

我が国において、デジタル技術の活用を軸としたデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進は、官民共通の課題となっている。2020年12月に成長戦略会議が「実行計画」をとりまとめたが、民間のDXとデジタル・ガバメントの推進が、グリーン成長戦略と並ぶ経済成長戦略の両輪である。成長戦略からみた官民のDXについて、内閣官房成長戦略会議事務局次長の野原諭氏にお話を伺った。

我が国におけるDXの課題

2020年12月1日に成長戦略会議で「実行計画」がとりまとめられた。「デジタル」と「グリーン」が今後の経済成長のドライバーとの位置付けであり、DXを通じた産業構造の変革を進めていく必要があると考えている。しかしながら、ひとくちにDXといっても、JEITAのレポート1にあるように、例えば日米では捉え方が大きく異なっている。DX推進の目的について、日米の大手企業各300社程度に行った調査では、日本企業では「業務のオペレーションの変革や業務改善」が41%でDXの目的のトップだが、米国企業では「新規事業・自社の取組の外部化」が46%でトップとなっている(図表1参照)。今後日本では、DXを進めることによって新しい付加価値を生み出すことにつなげられるかがポイントとなる。すなわちDXを通じて、既存業務の効率化に留まらず、新規事業の創出とそのマネタイズ化、そしてそれを企業の成長のドライバーとしていくことができるかが重要である。
しかし、日本では、上記調査結果にあらわれているように、これまで経済全体の傾向としてはどうしても内向きなDX投資に偏りがちで、DXによって新しいビジネスを生み出せてこなかったのではないだろうか。コロナ禍を乗り越えた次の局面での成長を見据え、デジタル技術の活用を新たなビジネスへとつなげていくことが今後は必要だ。

図表1 DXに関する日本企業と米国企業の比較

(出典)成長戦略会議(第4回)資料2

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