はじめに
近年、諸外国ではデジタル・ガバメントの推進、及びエビデンスに基づく政策形成の重要性に関する認識の高まりと相まって、省庁間でのデータ連携、政府全体でのデータの活用のための標準化、相互運用性の確保の動きが進んでいる。諸外国の動向を見ると、米国では、2019年6月にデータマネジメントのスキル向上、相互運用性確保、各省庁のベストプラクティスの政府全体への展開を通じたデータマネジメントの一貫性確保、及びこれらの取組を行ったうえでのデータの更なる活用拡大を目的として、連邦データ戦略(Federal Data Strategy)を策定した。また、英国では、本年4月には政府全体でのデータの共有、活用を促進することを目的とする機関として、データ標準化機構(Data Standards Authority)を設置するとともに、9月には新たな国家データ戦略(National Data Strategy)を策定した。このような動きは、時期の差こそあれ、英米以外の国でもここ数年見られており、政府全体でのデータの横断的な活用は世界的な潮流となっている。我が国においても、官民データ活用推進基本計画に基づき取組が進められているところである。その中で、省庁間でのデータ連携、政府全体でのデータ活用のための標準化、相互運用性の確保を実現するにあたって、今後、具体化に向けた検討を進めていく必要がある。
今回取り上げるインドネシアにおいても、質の高いデータの創出、データへのアクセスの向上、国・地方間でのデータ共有、及びこれらを通じたエビデンスに基づく政策形成を行うことを目的として、データの統合により政府横断的なデータの共有及び利活用を可能とするOne Data(インドネシア語ではSatu Data)政策を2016年に開始した。本政策に基づき、各機関のデータを一元的に検索、利用することができるOne Data Indonesiaポータルサイト(https://data.go.id/)の構築をはじめとして、具体的な取組を推進している。
本稿では、今後我が国において政府横断でのデータ活用に向けた取組を進めるうえでの参考事例として、我が国の官民データ活用推進基本法の制定とほぼ同時期に取組を開始した同国におけるOne Data政策に関して、導入に至る課題認識と経緯、取組の概要、省庁における具体的な事例、及び今後の展望を中心に、昨年一般社団法人行政情報システム研究所が実施した海外調査におけるヒアリングの内容も踏まえて紹介する(※1)。
(※1)海外調査の報告書は、当研究所ウェブサイト、https://www.iais.or.jp/reports/labreport/20200331/2019overseas_research/に掲載している。