1.コロナ禍に必要性が高まる官民連携
人口約40万人の神奈川県横須賀市で市議会議員を6年、市長を8年経験する中で、政治・行政の可能性と同時に、その限界を痛感してきました。たとえば象徴的な地域課題として、空き家問題が挙げられます。高度経済成長期には、行政が率先して住宅を建設し、県営住宅や市営住宅を供給してきました。しかし今では、団地に点在する空き家・空き地に頭を悩ませている自治体がほとんどなのではないでしょうか。
このような地域課題に対して、行政だけにその解決を依存することはできない状況となっているのは疑いようがありません。財源不足・人材不足・ノウハウ不足の三重苦に立たされているからです。市長を退任後、日本各地でその実情を目の当たりにした筆者は、日本版GR(Government Relations)を「地域課題解決のための良質で戦略的な官民連携の手法」と定義し、その必要性を広めること、事例を学べること、プレーヤー同士がつながれることを目的に、一般社団法人 日本GR協会を設立しました。
Webサイト「コロナ対策 自治体最前線!」の立ち上げ、また全国青年市長会と連携して毎月開催しているGR勉強会における自治体首長との対話などを通じて、良質で戦略的な官民連携の方法論(=GR)がこのような危機管理においても非常に重要であるという確信に至っています。
「コロナ対策 自治体最前線!」は、全国の自治体における最新のコロナ関連政策を一覧で見られる無料のWebサイトです。私たちの想いは、「コロナ対策の最前線で働いている自治体関係者にエールを送りたい。的確な判断と迅速な行動に結びつく情報を整理して届けるべきではないか?」ということ。「官民連携」「情報発信」などの切り口で、新型コロナウイルス感染症対策に関する自治体の特徴的な取り組みをできるだけ集めたこのサイトを立ち上げました。自治体公式サイト・関連団体サイトなどの調査作業はもちろん、Webサイトの構築まで完全なボランティアによる運営で、何より大切にしていたのはスピードです。というのも、全国の自治体が6月議会に向けてコロナ対策の補正予算を検討している時期だったからです。メディアでは不確かな情報が流れ、政府も的確な打ち手を欠いている中で、情報を整理して取捨選別する労力も時間も、自治体には存在しない状況でした。自治体関係者の皆さんが不慣れな事例調査に時間をかけずに良質な情報にあたれることには極めて高い価値があると考えて、突貫で5月には立ち上げることができました。