2018年に創業70周年を迎えたフジテック株式会社は、エレベータ/エスカレータの専業メーカー。国内外に多くの営業拠点、生産拠点を持ち、研究開発から製造、販売、保守、リニューアルと幅広い業務に、約1万人の従業員が携わっている。そのなかで、2014年に入社して情報システム部門の改革に着手し、パブリッククラウドを導入。以後、同社のデジタル化を推進してきた友岡賢二氏に、大企業におけるパブリッククラウドの活用をはじめとするデジタル化のアプローチと、そのプロセスにおける情報システム部門の役割について聞く。
1.重要なのは「自分たちでつくる」部分と「外部のものを使う」部分の峻別
私が入社した2014年当時、当社はクライアントサーバー型の基幹システムを主に使用しており、加えてウェブテクノロジーを活用したアプリケーションが存在するという、システムの混在期にありました。これは当社のみならず多くのメーカー企業においても同じような状況であり、インターネット以前のレガシーとインターネット以降のテクノロジーが地層のように積み重なっている状態であったと言えます。
このような状況のもと入社した際に、新しく入ったマネージャーの役割はその組織にある最も良いものを見つけてそれを引き出し、伸ばすことにあると考え、「引き算」ではなく「足し算」の取組を進めました。そこで、最初に行った「足し算」は2つです。まず、グーグルのグループウェア「G Suite」を中心としたSaaSの導入です。(図表1)自分たちで全てを開発から行う必要はなく、すでに世の中に認められている良質で安価な製品やサービスがある場合には、積極的に採用していくこととしました。次に行ったのが、ワークフローなどのいわば「小粒な」SaaSの利用です。必ずしも全社単位で利用するとは限らず、働き方や扱う情報の秘匿性といった条件を勘案して、場合によっては部門や小さなグループといった単位でもSaaSを活用しています。
図表1 G-Suiteの導入
(出典)フジテック提供