はじめに
英国政府においては、2013年にクラウドファースト・ポリシー(※1)が策定され、政府機関はクラウド、特にパブリック・クラウドの活用可能性を他の選択肢に先駆けて検討するとともに、他の選択肢を採用する場合には、当該選択肢のセキュリティ、柔軟性、費用対効果が適切なものであるかを示すことが求められるようになった。同ポリシーに基づき、各機関におけるクラウド活用が進められ、現在では多くの省庁がインフラの一部をクラウドに移行している。
このような中、各省庁の取組を総括する試みが同政府のテクノロジ・デジタルリーダーネットワーク(TDLN)(※2)によって提案された。この提案を受けてガバメント・デジタル・サービス(GDS)(※3)がクラウン・コマーシャル・サービス(CCS)、英国サイバーセキュリティセンター(NCSC)、及び各省庁の専門家の協力のもと、政府職員を対象としたユーザリサーチやワークショップを通じて課題及び経験を共有する活動を行った。その結果を踏まえる形で、GDSが中心となり、クラウド・サービス・プロバイダ(CSP)の協力も得て、本年3月に政府機関におけるクラウド活用ガイドを取りまとめ、公表した(図表1)(※4)。
図表1 クラウド活用ガイド作成までの経緯
(出典)GDSウェブサイトを基に筆者作成
(※1)https://www.gov.uk/guidance/government-cloud-firstpolicy
(※2)TDLNは、デジタル技術の活用を政府横断的に推進することを目的として2012年に設置されたデジタル・リーダーネットワーク(DLN)と、適切な技術を用いたデジタルサービスの提供を推進することを目的として2013年に設置されたテクノロジ・リーダーネットワーク(TLN)が2017年に統合されて成立した。同ネットワークは英国政府のデジタル変革戦略の目標を達成するための政府横断的な意思決定を支援するネットワークであり、GDS職員が議長を務め、19機関が参加している。
(※3) GDSは内閣府に設置され、英国政府のデジタル・ガバメントの推進において中心的役割を担う機関である。GDSの整理の経緯とその後の活動については、折田裕幸(2015)、拙稿(2016)及び拙稿(2018)等を参照されたい。