2018年に実施された国連による電子政府調査でデンマークは1位に選ばれた。デンマークは人口約600万人の小国であり、ほとんどのライフイベントに公共部門が関与しているという特徴がある。同国でデジタルデバイド政策を統括するデジタル化庁デジタルインクルージョン部門リーダーのSusanne Duus氏とチームメンバーに取り組みを伺った。
取材・文/増田 睦子(行政情報システム研究所)
デンマーク政府におけるデジタル化の背景
デンマークは公共部門に対し、市民からの信頼が非常に高いという背景があります。そのため、政府が指揮をとって行う取り組みについて、他の国であれば許容されないようなことであっても、デンマークであれば高い信頼度に基づいて実行できる場合が多々あります。しかしながら、市民と行政との信頼は少しの誤りですぐに崩れてしまうものです。私たちが近年注力しているのは、現在高い状態になっている信頼度をいかにしてデジタル化の場面で維持し、活かしていくのかということです。市民データを活用する場面においては、例えばサイバーセキュリティーやそれ以外のセキュリティーをきちんと強化しておくことによって、市民からの信頼を失わないよう努力を続けています。
政府がデジタル化を大規模で進めることに関しては、技術的な部分で必須となっている要件、前提条件がいくつかあります。それはインターネット環境、スマートフォンなどのデバイスの普及、デジタルID、デジタルサービスを提供するポータルの4つです。現在のデンマークではほとんどの人がインターネットにアクセスできる状態が整っていて、しかも日々、インターネットを活用しているという方がほとんどです。また、行政とのやりとりもオンラインを活用する比率が大変高い状況になっています。そして、90%の方がスマートフォンを所有しています。
デンマーク市民はEasyIDというものを持っており、このEasyIDの満足度は非常に高く、約90%のユーザーが満足していることが分かっています。EasyIDを使うことでさまざまな行政サービスをセルフサービスで利用する際にログオンすることができますし、民間にまたがる形で、金融機関に対してログオンもできます。