1.はじめに
マイクロソフトはこれまで数々の海外行政機関でのクラウド活用促進やデジタル革新の取り組みに携わってきました。これらの経験や考察をもとに、具体的な事例を交えて、諸外国における行政情報システムのクラウド移行の動向や政府・行政機関の技術革新のカギとなる要素についてご紹介させていただきます。
世界中の政府・行政機関は、市民や民間企業へのサービス改善を実施すべく、様々なプレッシャー下にあります(図1)。
図1 行政に期待されるデジタル革新―World Economic Forumより―
(出典)World Economic Forum, Future of Government Report
https://www.alejandrobarros.com/wp-content/uploads/old/WEF_EU11_FutureofGovernment_Report-1.pdf
世界経済フォーラム、「Future of Government」レポートから引用した上記文章にあるように、非常に複雑で、変化が速い環境の中、政府・行政機関には新たなツール等を活用してより効率的且つ効果的なサービスの提供が急務になっています。具体的にサービス改善とは、コスト削減をしつつ、イノベーションを推進し、且つサービスの継続性を担保することです。多くの行政機関では、変化する需要と高齢化や多様化した市民からの要望が高まっており、財政や人材が逼迫しています。特に都市部では、人々がより良い仕事、健康、教育等の機会を求めて移住するにつれて、市民サービスの改善・拡充を迫られています。行政機関間でのプレッシャーもあります。他の都市、国、地域に遅れをとると、経済的な問題、医療障害、教育上の課題、さらには公共安全上の問題になる可能性があります。
政府・行政機関はこれらの課題に対する解決策として、クラウドやモバイルコンピューティング、ビッグデータやデータ分析等の先進技術を活用すべく、情報システムのクラウド移行を進めています。これらの先進的政府・行政機関は手作業での旧来プロセスや、紙ベースの業務からの脱却を遂げています。クラウドコンピューティングやデジタル技術がこれらの状況を改善してきた例を紹介していきたいと思います。