ユーザーからの問い合わせ対応など、チャット(会話)をロボットが代行してくれるAIチャットボットは、近年、行政機関でも活用に向けた実証実験が広く行われている。導入自体は比較的敷居が低いことも理由のひとつと考えられるが、その全てが効果的な継続運用につながっているとは言い難い状況もある。背景には、「導入さえすればAIにお任せできる」という過度な期待やある種の誤解もありそうだが、今回は、そこを乗り越えてユニークな運用に至った企業の取り組みを取材した。
三井グループの大手総合商社、三井物産株式会社では、対外的な窓口ではなく、社内向けに基幹業務システムの運用サポートを行うヘルプデスク「MIRAIデスク」内に、AIチャットボットを導入した。電話、メールでの対応やFAQ管理を行なってきたスタッフが、従来業務と並行して、初めてのチャットボット導入に挑戦した。
「山本山」なる愛称で親しまれるこのAIチャットボットは、相撲力士をモチーフにした親しみやすいキャラクターを採用。運用実績を通じて番付を昇格させる設定など、スタッフや利用者が「育て上げる」感覚を大切に、その活路開拓や利用促進を進めてきた。取材を通じて伺ったそのプロセスと知見は、広くAIチャットボットの運用・活用のヒントになり得ると考え、ここに紹介したい。