機関誌記事(記事単位)

2020.04.10

2020年4月号特集 英国内務省ーRPA導入から見えたアジャイル型開発の有効性

英国内務省
CTO ダニエル・ジョンソン(Daniel Johnson)

英国政府では内閣府内にロボティクスオートメーションユニットを設置し、RPAの導入を積極的に推進している。内閣府のサポートを受けながらいち早くRPA導入を進めた内務省では、RPAによる業務自動化の成功事例が増えるにつれ、従来のウォーターフォール型開発では対応できないという課題を抱え始め、よりスピーディーにデリバリーが可能になるアジャイル型開発を導入することを決めた。現在進行形で旧来型開発からアジャイル型開発へのシフトに取り組む英国内務省のダニエル・ジョンソンCTOと内務省RPAリーダーのジョシュ・ブラウン氏に話を伺った。

取材・文/増田 睦子

 

1.内務省RPA開発での課題

英国・内務省ではRPAの実証実験(PoC)を行うフェーズをサードパーティーのサプライヤーに委託していました。彼らのアプローチは従来型の仕様を事前にしっかりと決めるウォーターフォール型の開発手法でした。ウォーターフォール型はご承知の通り、最初にすべての要件を定義し、完全に整備された状態でテストを行うというやり方です。しかし、RPA導入にあたってはウォーターフォール型のやり方にいくつかの課題を感じていました。

まず最も大きな課題は、デリバリープロセスに非常に長い時間がかかり、委託先であるサードパーティーへ支払う人件費がかさんでしまうという問題です。2つ目はビジネス側に不満がたまることです。ウォーターフォール型で必須となる要件定義書などのドキュメントは6090ページという非常に量が多いものになります。ビジネス側のサブジェクトマターエキスパート(SME)は細かな要件を整備するためにその大量の文書を長い時間レビューをする必要があり、ウォーターフォール型は決してやりやすいものではなく、私たちは苦痛を感じている状態でした。