1.はじめに
民間企業を中心に取り組みが始まった「働き方改革」は官公庁においてもその必要性が認識されるようになり、中央官庁や地方自治体でも残業時間の削減やテレワークに取り組んだり、「働き方改革」に伴う環境整備の一環としてオフィスを見直したりする事例も見られるようになってきた。筆者は昨年、経済産業省や国土交通省などの中央官庁や葛飾区、静岡市などの自治体で「働き方改革」に伴うオフィス改革についての講演会を行う機会があり、その際にオフィス改革手法として注目されている「フリーアドレス」や「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」という言葉の認知度を確認してみたが、今や「フリーアドレス」という言葉は参加されたほぼ全ての方に認識されており、「ABW」という言葉も少数ではあるが、知っている方もおられた(これらの言葉についての説明は後述)。従来のオフィス環境のままで働いている職員でも「フリーアドレス」や「ABW」という新しいオフィス環境に関する言葉を見聞きする機会が増え、多くの職員がなんとなく知っているという状態にまで達した現在は、官公庁におけるオフィス改革のターニングポイントを迎えていると言える。しかし、その一方ではなぜ「働き方改革」とオフィス環境整備が関係するのかが理解できず、単にオフィスの環境を変えたぐらいで本当に働き方が変わるのか、という疑問の声を聞くこともまだ多い。
本稿ではこれまでの日本のオフィスにおけるレイアウトの変遷を振り返りながら、「働き方改革」を実現するオフィス環境とはどのようなものか、またそのオフィス環境を実現するために必要な段階について簡単にまとめる。