1.はじめに
我が国では、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させることにより、多様なニーズにきめ細かに対応したモノやサービスを提供し、経済的発展と社会的課題の解決を両立する超スマート社会「Society5.0」の実現を提唱している。また、経済産業省では、「Society5.0」の実現へ向けて様々なデータの「つながり」から新たな付加価値を創出していく「Connected Industries」という概念を提唱し、その実現に向けた取組を推進している。
あらゆるものがつながる「Society5.0」「Connected Industries」では、企業間・産業間のネットワーク化が進展して新たなつながりが生まれる中で、付加価値を創造するための一連の活動であるサプライチェーンの形態も、これまで取引することのなかった新たな相手を巻き込んだ柔軟かつ動的な構成へと変化する。また、サイバー空間とフィジカル空間が相互に作用しあう中での新たな付加価値の創造も期待される。一方で、この変化をサイバーセキュリティの観点から捉えると、サイバー攻撃の起点の拡大や、サイバー攻撃による被害がフィジカル空間に及ぼす影響の増大といった、これまでとは異なる新たなリスクを伴うことになる。
そのため、経済産業省では、「産業サイバーセキュリティ研究会WG1(制度・技術・標準化)」を中心として、新たな産業社会において付加価値を創造する活動が直面する新たなリスクに対応していくためのセキュリティ対策について検討を進めてきた。