1.はじめに
ICTの利活用は国際協力の様々な分野における開発効果発現を拡大あるいは効率化することを目指しており、近年では特に持続可能な開発目標(SDGs)のあらゆる分野への貢献が期待されている。さらにSDGs達成のためには、課題を一気に解決するようなイノベーションを起こす破壊的技術が求められており、ICTに対する期待は年々大きくなっている。
国際協力機構(JICA)の2019年度計画(※1)にも、『ICTを活用したソリューションを提供することで新しい価値や仕組み創造する「X-TECH」を促進し、開発事業の効率化及び効果拡大を図る』と記載されているように、JICAとして経済成長の基礎及び原動力の確保のためにICTを積極的に利活用し、X-TECHによる開発効果の増大や効率化を目指す方向性が打ち出されている。
国際協力事業においては、これまで大規模な通信インフラやITシステムが整備され、様々なサービスの基盤となりつつある。近年ではその通信インフラの上に様々なアプリケーションが実装されてきており、規模が小さいながらも課題を的確にとらえているものが少なくない。大規模インフラ開発は資金協力で行われることが多いが、中小規模システムは、技術移転を目的とした技術協力プロジェクトの中で開発されることが多い。本稿では国際協力事業における中小規模のシステムについて、開発の現状を踏まえた上で、今後有効であろうと考えられる開発アプローチについて述べる。
(※1)https://www.jica.go.jp/disc/chuki_nendo/ku57pq00000t0aea-att/nendo_h31_00.pdf