1.はじめに
経済産業省では行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を掲げ、2017年から取組を進めてきた。先日の2019年5月23日に国会でデジタル手続法が成立したが、次世代のデジタルインフラを整備するためには、行政の組織のあり方やサービス開発の仕方自体を変えていかなければならない。これは縦割りの行政組織やユーザー視点の欠けた公務員の姿勢自体を変革することでもある。我々もまだデジタル化に向けた第1歩を踏み出したところではあるが、これまでの取組で得られた学びや、課題などについて共有したい。
2.経済産業省で目指すもの~ユーザーの利便性向上と職員の生産性向上~
筆者は現職に就く前にシンガポール、アメリカに留学していたが、海外の政府では行政デジタル化の取組が大きく進んでいることを目の当たりにした。シンガポールでは国を挙げたスマート・ネーション・イニシアティブが掲げられており、首相府の直下にGovTechという行政デジタルサービスの独立組織が設置されている。彼らは政府全体のデジタルアーキテクチャーの整備や、行政サービスをエンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャーなどで構成される内製化チームを抱えてアジャイルに開発を進めるなど凄まじい勢いで行政のITサービス化を進めている。