1.はじめに
特許庁では、2017年4月に「特許庁における人工知能(AI)技術の活用に向けたアクション・プラン」を公表し、業務へのAI技術の活用可能性について検討を行ってきた。具体的には、特許庁の業務全体からAI技術の適用可能性が見込まれる業務を選定し、選定した業務について実証事業による検証を行ってきた。さらに、実証事業の結果を踏まえ、AI技術を活用した業務支援ツールの導入に向けて準備を進めているところである。本稿では、これらの特許庁におけるAI技術の活用に向けた取組と、今後の方向性について紹介する。
2.特許庁の業務概要
特許庁におけるAI技術の活用に関する取組を紹介するにあたり、まずは、特許庁の業務概要について説明したい。特許庁は、技術的なアイデア、すなわち発明を保護する特許、工業デザインを保護する意匠、ブランドを保護する商標等の知的財産権の出願を受け付け、審査官による審査を経て、権利の登録を行っている。これらの出願は年間数十万件に上るが、特許庁では出願のオンライン受付を1990年から開始し、庁内の業務についても段階的にシステム化を進めてきた。