1.はじめに
近年、諸外国では、デザインのアプローチを行政分野にも取り入れようとする動きが拡がりを見せており、このような流れを受け、我が国においても、近年のデジタル・ガバメントに係る政策の中で、サービスデザインのアプローチを取り入れる方針が示されることになった。
今後、デジタルを活用した利用者中心の行政サービス改革と、これによる顧客体験の向上が図られることが期待されているが、利用者中心のデジタルサービスの利便性向上は、従来の電子政府でも重点テーマとして繰り返し示されていたものであり、特段新しいものではない。では、デザインのアプローチを取り入れることで、これまでとは違ったどのような変化がもたらされることになるのだろうか。
本稿では、Design Thinkingを政府主導で戦略的に展開しているシンガポールと、ボトムアップのアプローチでDesign Thinkingによる改革を進めているマレーシアの取組などを参考にしつつ、我が国における今後の取組の方向性について考察してみたい。