機関誌記事(記事単位)

2018.12.10

2018年12月号トピックス パーソナルデータエコシステムによる価値共創

東京大学 大学院情報理工学系研究科 理化学研究所 革新知能統合研究センター
橋田 浩一

1.データポータビリティ

パーソナルデータの活用を促進するにはデータポータビリティ(data portability; 本人がパーソナルデータを自由に他者に開示できること)が必要である。現在は図1の左側のように事業者にパーソナルデータが集約されているが、データポータビリティにより右側のようにパーソナルデータの管理運用を本人に集約する方が、以下のような意味においてはるかに望ましい。

・データの活用が容易になる。パーソナルデータを本人以外が管理していると、本人同意に加えてその管理者の協力も必要なので、データの活用が困難である。たとえば、医療データの活用に患者本人が同意しても病院がデータを開示しなければそのデータが使えない。しかし図1の右側のようにパーソナルデータの管理者が本人だけであれば本人同意のみによってデータが活用できる。
・個人向けサービスの価値はサービス受容者にとっての価値だから、受容者本人の意向に従ってパーソナルデータを活用すればサービスの価値が高まりやすい。
・パーソナルデータを本人に集約することによって自然に名寄せできるので、データの価値が高まる。
・個人の方が事業者よりも圧倒的に数が多いから、パーソナルデータを事業者に集約するよりも本人に集約した方が社会全体でデータの管理が分散する(1回の情報漏洩で基本的に1人分のデータしか洩れない)ので、安全性がはるかに高く、したがって管理コストが低い。

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