文化財は、人の幸せにどう関わっていくのか。AI、IoTが急速に発達しその倫理が問われるなか、デジタルアーカイブとその本質について2つの事例を用いて、あえて通常見過ごされがちな問題点をあぶり出し、文化財デジタルアーカイブによるウェルビーイングの可能性を探る。
1.はじめに―文化財とは―
文化財とは、すなわち文化が人格を持ち有形無形に表現されたものといえ、歴史的に高い文化的価値を有するものと認識されている。
平成30(2018)年6月1日、「文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」が成立し、明年4月1日改正文化財保護法は施行されることとなる。文化財に関わる者にとっては、保存と活用において大きな転換を迎えたといえる。
筆者も改正のための審議会専門調査員としてワーキンググループで何度も議論を重ねる中で、文化財を維持していくための技術評価の難しさを痛感している。