本稿では、「電子決裁移行加速化方針」(2018年7月20日デジタル・ガバメント閣僚会議決定。以下「加速化方針」といいます。)が決定されるに至った経緯や、その考え方等についてご紹介します(意見にわたる部分は筆者の私見ですので、その旨お断りします)。
1.「決裁文書改ざん」の再発防止策としての電子決裁
本年(2018年。以下、特に断りのない日付については同様)春、財務省において決裁文書の改ざんが行われていたことが世情を騒がせました。特に、通常の行政文書以上に厳格に管理されるべき決裁文書を書き換えていた旨を財務省が3月12日に公表したことは、衝撃をもって受け止められました。
改ざんされた文書14件のうち13件は紙に印鑑を押す形式で決裁されたものでしたが、残り1件は電子決裁されたものであり、改ざんを行った日時やアカウント、改ざん前の文書がシステム上に残っていました。こうして、電子決裁が「誰が・いつ・どのような変更を加えたか」がシステムログとして残り、決裁文書を適正に保存する観点からも有効であるとしてクローズアップされ、3月23日の閣僚懇談会では、安倍総理から各行政機関に対し「更新等の履歴が厳格に管理できる電子決裁システムへの移行を加速する」ことについて指示がなされました。今回の加速化方針は、この指示を受けて取りまとめられた政府方針です。