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2018.10.10

2018年10月号トピックス EBPMが継承すべきEBMの思考法

株式会社メトリクスワークコンサルタンツ
代表取締役 青柳 恵太郎

1.はじめに

証拠に基づく政策立案(Evidence-Based Policy Making: EBPM)の実現、強化といったことを目にする機会が増えている。平成296月には「経済財政運営と改革の基本方針 2017について」いわゆる「骨太の方針2017」が閣議決定され、「EBPMの推進」という言葉が盛り込まれた。そして、国や地方公共団体の行政機関は各種具体的取り組みを通じてEBPMの考え方に則った行政運営を実現することを目指し始めている。内閣官房行政改革推進本部事務局によれば、「EBPMとは、(1)政策目的を明確化させ、(2)その目的のため本当に効果が上がる行政手段は何かなど、「政策の基本的な枠組み」を証拠に基づいて明確にするための取組」とされている(内閣官房行政改革推進本部事務局 2018)。

公共政策領域において“Evidence-Based”という言葉が注目されるようになった契機は、イギリスのブレア政権が1999年に公表した白書「Modernising Government」によるものと言われている。しかし、“Evidence-Based”という考え方の源流は医学分野で提唱された根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine: EBM)にあり、EBPMもその系譜に連なるものと捉えるのが一般的であろう(Baron 2018)。後述する通り、EBMが提唱された背景にはエビデンスに基づかない医療行為が一般的であったという裏返しの事実がある。この問題意識を公共政策領域も共有し、2000年代に入った頃から教育や刑事司法、福祉、国際開発といった分野においても証拠に基づく政策立案・実践がアメリカやイギリスを筆頭に積極的に展開されてきた。他方、日本に目を転じると、この問題意識が現在EBPMの名の下で実際に検討されている取組や認識課題に継承されていないのではないかと思われることが少なくない。医学分野で育まれてきたEBMという行動様式を安易に公共政策領域に拡張することの危険性や困難を指摘する議論も根強い。公共政策領域の特殊性を十分に勘案してEBMの中心概念を適応させる必要があることは筆者も同意するところである。しかしながら、その際にはEBPMの源流にあるEBMの問題意識を置き去りしないことが重要であろう。

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