1.はじめに
気象庁では、安全で安心かつ豊かな社会のために、国民の生活に影響を及ぼす様々な気象の予測情報を発表している。この予測情報は、当然のことながら、予測精度が高いこと、社会に有用な内容であることが重要である。気象庁ではこれらを実現するための多くの取組みを継続的に行ってきた。前者の予測精度の改善については、未来の大気状態を予測するためのスーパーコンピュータの導入や地道な調査研究など多方面から継続的な取組みを行ってきた。後者の社会に有用な情報については、過去には降水確率予報や地方天気分布予報、最近では市町村警報、特別警報及び警報級の可能性等の新たな情報の発表を開始してきた。これらの取組みを支援する1つの道具として、気象庁は機械学習を約40年に渡り活用し、予測精度の維持向上及び新たな気象情報の発表を行ってきた。近年、ディープニューラルネットワークという最新の機械学習技術が画像認識や音声認識等の分野で大きな成果が出たのをきっかけに、様々な機械学習が今後各方面で利用されてゆくと考えられる。ここでは、気象行政の予報業務という分野における機械学習を利用した取組みを紹介し、また約40年機械学習を活用した経験に基づくその有用性、限界や留意点について解説したい。