この5月、エストニアのタリンに5日ほど滞在してきた。スタートアップを訪問したり、テックカンファレンスに参加したり、デジタル先進国としてのエストニアの「現在」を観察するのを名目とした旅だったが、そのなかで最も強く印象に残ったのは「アイデンティティ」という言葉だった。
思えば、デジタル空間というのは、物理空間における「自分」とは異なった自分でいられることが、ひとつの大きな魅力だったのだろう。国籍やジェンダーや社会的身分や属性を問われないアノニマスな空間は、それ自体が「自由」を意味したし「民主化」をも意味した。おそらく少なからぬ人にとっては「解放」を意味した。